男性不妊症を治療する
不妊につながる7つの生活習慣
精子の健康に良くない生活習慣として喫煙、長風呂・サウナ、膝上でのパソコン操作、ブリーフ・ボクサーパンツ、長時間の自転車こぎ、育毛剤、禁欲でのため込みなどが考えられています。
精巣の働きが最も活発になるのは 32~34℃ といわれており、精巣が入っている袋である陰嚢は、精巣が体温より約 2℃ 低い温度になるよう温度調節を行っています。精子は熱に弱く、陰嚢は温めすぎると精巣の活動の妨げになるため注意が必要です。禁煙、ストレスをためない、栄養バランスのとれた食事をとるなど、日常生活を改善しましょう。
喫煙
喫煙によって精子の濃度が減少し、運動率も低下するといわれています。また、ニコチンによって血流が悪くなり、勃起障害(ED)が起こりやすくなります。また、妊婦本人が喫煙しなくても、まわりの人の喫煙によってたばこの煙にさらされる「受動喫煙」についても、胎児の発育などに悪影響が生じることが知られています。パートナーと共に禁煙しましょう。
長風呂・サウナ
精巣が温まり過ぎてしまうため、熱いお風呂やサウナに長時間入るのは避けましょう。
膝上でのPC操作
股間部が温まるため、膝上にパソコンを置いて作業をするのは避けましょう。
ブリーフ・ボクサーパンツ
ブリーフやボクサーパンツだと熱がこもってしまうため、風通しの良いトランクスのほうがよいでしょう。
長時間の自転車こぎ
長時間に及ぶ自転車通勤も股間部への圧迫が良くないとされているため、注意しましょう。
育毛剤
育毛剤には精子に悪影響を与える成分が含まれていることがあるため、妊活中の使用については注意しましょう。
禁欲での溜め込み
精子を溜め込むと精子の質が低下するため、溜め込むことは良くないといわれています。
精巣の中にある古い精子からは「活性酸素」が産生され、それによって細胞がダメージを受け、精子を作る力が低下してしまいます。また、精子の先にあるDNAの二重らせん構造がちぎれ、精子自体の質も落としてしまいます。
できれば2~3日に1度は射精しましょう。精子は精巣の中で毎日1000万個ほど作られているため、毎日射精しても問題ありません。
人工授精やART(体外受精、顕微授精)
精子が若干少なく自然妊娠が難しい場合には「人工授精」を行います。運動する精子が少なく人工授精が難しい場合には「体外受精」を行います。精子の数が極端に少なく体外受精が難しい場合には「顕微授精」を行います。
人工授精やARTで必要となる精子は、精液検査と同様、マスターベーションで精液を容器に採取し、皮膚片や子宮に影響を与えるホルモンなどを除去し、元気な精子のみを抽出します。この抽出方法としては大きく2種類あり、精子自体の運動による分離法(=swim-up法)と遠心分離による方法(=撹拌密度勾配法、遠心分離法、percoll法)に大別されます。処理法で妊娠率に差はなく、どの処理法を選択するかは病院やクリニックの状況や精液の状態に応じて決定されています。
精子を育てるためのくすりの投与
LH(黄体形成ホルモン)やFSH(卵胞刺激ホルモン)が分泌されていない方では造精機能が低下している場合があり、ゴナドトロピンを補充する場合などがあります。他に、男性ホルモンやビタミン剤などが使用されることもあります。
精子の回収
精液検査を何回か行っても精液中に精子がみあたらない場合には、精子を育てるためのくすりの投与などを行い、射精した精液中に精子がみられるように治療します。それでも精子がみあたらない場合には、精子が作られる精巣から精子を直接取り出す手術「精巣内精子回収術(TESE)」などを行います。
精巣内精子回収術では、陰嚢を5〜10mm程度切開し、精巣内の精細管という組織を採取します。精細管は精子を作り出す組織であるため、取り出した組織を顕微鏡で観察すると精子が見つかりやすくなります。
非閉塞性無精子症の場合では精子は見つけにくいと言われていますが、1つでも精子が見つかれば、顕微授精と組み合わせて妊娠できる場合があります。
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